【頂き物】雨の日【菊地寛さん】

雨の日のメガスタ
菊地寛さんがくださった雨の日のちょっとした出来事なメガスタ。
あんまりかわいかったから絵描いちゃった。

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スタースクリームは雨が嫌いだ。
飛行中に視界が悪い、離発着時に余計な神経を使う、愛機の機体を傷める元になる。
寒いし傘は邪魔だし湿度で柔らかい髪はいつも以上に跳ね返るし、良いことはない。そして今日は新しい靴をおろしたばかりだったのだ。
いかにも一見の客はお断りという風情の厚いドアが、雨と外灯の明かりで飴色に光っているのをじっと見詰めたスタースクリームは、我が身の不運を呪った。
傘をさしてはいるが、すっかりコートの裾もブーツも雨を吸って重く冷えている。雨脚はいまだに弱まる気配もない。
反して窓から伺い見える店内は、オレンジを帯びた照明にくるまれ、暖かく快適そうである。
カウンターに乗ったのは、当たり年の赤だ、ラベルに見覚えがある。
普段はウイスキー党のくせに今夜に限ってそんなものを楽しげに傾けている理由など、ひとつしかない。
それこそがスタースクリームがドアを開ける事もなく、じっとその場に立ち尽くしている理由であった。
仕立てのいいスーツの広い背中の横に並んだ、趣味は違えど同じ位にいいスーツ姿の男。
窓辺で葉を伸ばす紫陽花越しに二人が顔をよせ、楽しげに肩を揺らして笑いあう様は実にしっくりいっていて、
傘を持って来るようにと命令した彼に高い一杯をねだろうとした気分さえ萎えてしまう。
また、白い美しい横顔が、笑みの形に崩れた。高貴な血統が形造る、麗しい容姿。彼と対等にいられるだろう、厚みと均整を備えた肉体。
彼の隣に相応しい男だと、冷静になれば誰でも分かる。
彼の大きく骨ばった手が、ごく自然に、傍らの男の髪に触れる。笑みを刻んだまま、また何が言う唇。
それが彼のキスを受けるのは時間の問題な気がして、スタースクリームは持参したコウモリ傘をドア横に立て掛けると、
そそくさと自分に似つかわしくない店前から離れようとして…その傘にけつまずいた。
石畳の上で傘の柄がかんだかい音を立て、慌て再度立て掛けようとすると、ドアが開いていた。
長身のシルエットが言った。
「遅かったではないか、愚か者め」
あわあわしているスタースクリームが思わず店内に視線を走らせると、スツールに座るオプティマスの傍らで、華やかな美女が驚き顔で此方を見ていた。
「メガトロンにも連れが来たようだな!さあ、入ってワインでも」
「あ、いや、その…」
「残念だが俺は帰る、またなプライム」
グラスを掲げる友にあっさりと言い置いて、メガトロンはコートを受け取った。
ドアを閉めると、またそこは冷えた雨の路上だったけれど。
「帰るぞ、入れ」

そう告げて傘を広げたメガトロンが、傘の下でにやりと自分にしか見せない笑みを見せたから、スタースクリームは雨の憂鬱を一時忘れてその肘に腕をからめた。
雨もそう悪くはない。

megauta224

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このメガスタはもうすぐ挙式だと思いました。
スタちゃんそれマリッジブルーや・・・
かわいいかわいいかわいいかわいい!
ごちそうさまでした(;´Д`)スバラスィ …ハァハァ

ふと開いたメールボックスにこれが入っててごらんよ失神するレベルだよ。
毎度ありがとうございますん!

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