【頂き物】我々の日常風景【菊地寛さん】

私の落書き音スタに萌えてくれた菊地寛さんに頂いてしまった音スタ小説です。
隠匿しておくには素晴らしすぎるので皆様にもおすそ分けですw
ラブラブでエロエロでド変態な音スタをご堪能ください

 

 

我々の日常風景

廊下の角を曲がろうとしたところでスタースクリームは足を止めた。
本当なら腕に抱えた、何度目かの…カウントをすでに諦めて久しい…修正を加えた書類を、経理とレーザーウェーブの顔面に叩き付けてやるべく駆け足で通り過ぎねばならない地点なのに、耳に飛び込んできた単語にどうしても足を止めて聞き耳を立ててしまう。
「お前は付き合いが長いんじゃねえの?」
「ソウダケド、見タコトネーヨ」
壁にもたれて話しているのは、バリケードとフレンジーだ。
「情報部は忙しいんだろ、なら居眠りくらいすんじゃねーの?」
「シナイネー。ソウイヤ、欠伸シテルノモ見タコトネーナー」
「あのオッサン、どんだけ不感症なんだよ!それとも警戒心の塊か?…あーあ、つまんねー、あの澄ました顔で愉快な寝顔なら笑えたのによ」
「キット、ベッドニ入ッタ時ノマンマノ格好デ朝マデイルンジャネーノ、サウンドウェーブノコトダカラナ」
「オレもそう思う」
二人はサボるのにも飽きたのかそのまま立ち去ってしまったが、スタースクリームはしばしその場で、経理からの呼び出しがかかるまでみずからの爪先を眺めて佇んでいた。

「ただいま…」
結局、あの後も経理部およびレーザーウェーブと血で血を洗うような攻防を繰り広げ、追加の書類と言う名の宿題を持ち帰る条件付きで解放されたのは、一般企業なら超過勤務もいいところの時間だった。職場から近い自宅とは言え、玄関に入った時点ですでに日付は変わろうとしている。
電気は着いているが人影のないリビングを横切り、寝室のドアを細めに開けると、平均以上の体格の男二人が眠れるサイズのベッドにひとり分の盛り上がりがある。勿論、この家のもう一人の住人のものだ。
睡眠時間は短いが、一度眠ってしまうと少々の事では目覚めない男は、当然ながらドアを開けたくらいでは寝返りもうたない。枕を抱きかかえ、壁に背中を押し付けるように眠っている。いつものように。
「こんなのが見てみたいとは、あいつらも物好きなことだな」
苦笑とわずかな優越感を滲ませて呟き、スタースクリームはドアを閉めた。
書類が入ったブリーフケースを抱えたままキッチンに向かうと、スタースクリームはまず、習慣のままに小さなホワイトボードの前に立つ。これは、二人暮らしを始めた頃、多忙で中々会えない事による破局を回避するため…と差し出された交換日記を全力で拒絶して以来、代案として設置された物だ。
活字のような字で、
『明日は早朝会議。一時間早く出勤』
と書かれていた物を消し、スタースクリームは、
『レーザーウェーブから貰ったショコラマカロンを棚の中に入れておく。半分まで食べてよし』
と殴り書きしておいた。
さて、用事はすんだ。
後は忌々しい書類を片付けるだけだ。
しかし、ブリーフケースに手を伸ばすのより先に、軍服の下で腹が鳴った。サンダークラッカーが有給を取って不在で夜食にありつけなかったためだ。
仕方なく菓子を棚の中に仕舞う前に幾つか摘まんで誤魔化そうとしたが、その前にコンロの上の鍋に気付く。
蓋を開けると、中には生姜を効かせた鶏肉のスープ。まだ暖かい。寝る前に作っておいてくれたのか。
二人で住みはじめてすぐの頃、突然料理を始めたあいつに、忙しいのに効率的じゃないと言ったら、
──俺の手がいじりまわした食材がお前の体内に入るかと思うと気分がいい。まるで内臓まで犯している気分になれる。
と、端整な顔が際立つ真顔で言われ、裸足で家から飛び出したくなるほど引いたのは今となってはいい思い出だ。
翌日、レーザーウェーブに相談したら、
──あいつにはお前しか居ない。あいつなりの愛情表現なんだ、少々気味が悪いが気にするな!
と力一杯励まされて結局うやむやになってしまったが、それでよかったのだろうか…そうたまに悩まないと言ったら嘘になる。本当にごくたまにだが。
暖めたスープを口に運びながら、書類を片付けてゆく。栄養が頭にまで回ってきたのか、職場に居た時より進みが良い。
スタースクリームは何とか切りのいいところまで片付けると、ゴリゴリに凝った肩をほぐすためにシャワーを使い、ガウン一枚のまま残りの書類を掴んで寝室に向かう。
後はこれに全部目を通すだけだ。なら、ベッドで寛ぎながらやっても構うまい、別にあいつの気配を感じ、られる所にいたい訳じゃないからな……そう誰にともなく言い訳しながら、スタースクリームはナイトスタンドをつけて、寝室のドアを閉める。

ベッドの上の男は先程と変わりない姿で眠っているが、スタースクリームは慎重に…特に足元に注意を払って、ベッドまで向かう。ごくまれにだが、持ち主の気が抜けすぎると、触手が床の上まで這い出していることがあるのだ。
以前、研究所時代の唯一の友人(のようなもの)であった男と久々に会って食事に行き、珍しく痛飲し、真夜中に帰って来たことがあったが、その時は酔っていたせいもあり、床の上の触手をおもいっきり踏みしだいてしまった。
流石に眠りの深いこいつも鈍い叫び声と共に飛び起き、じろりとこちらを睨み付けてきたから一瞬で酔いも醒めて、すぐに詫びたのに、この男は聞く耳持たず……あの時は酷かった。
ようやくベッドに腰を下ろし、スタースクリームは溜め息を吐いた。
あの時は逃げる暇もなく裸に剥かれると、四つん這いにさせられ、触手で前を締め上げられ後ろも数本かかりでなぶられながら、奴のモノへの奉仕を要求された。知り尽くした内部を執拗に攻められ、何度も射精を伴わない絶頂に襲われ、ついには泣きながら解放を懇願したが男は赦さず、結局責め苦は二回男の精液を飲み下すまで続けられた…。スタースクリームは思い出して、恐怖に身を震わせる。
喉から萎えた性器を引く抜かれ、ほっと息をついた自分は甘かった。あの後こそが真の拷問だったのだから。
興奮に目を光らせた男が、力なく投げ出されていた脚に触れてきた。それがスタートだった。
長い指と大きな手、唇と舌と歯と吐息と悩ましい囁き声、体温と皮膚と目線、そして触手。すべての物を駆使して奴は絶頂を引き出し続けた。自分のモノだけはけして使わずに。
もう出すものも無くなったのに体は達する事をやめられず、口一杯に泣き叫びながら止めてくれと、何でもするからもう許してくれと哀願すると、奴は精液に濡れた指で涙にまみれた頬を一撫でし、
「もう二度と、夜中に男と二人きりで出掛けるな。いいな」
と妙な迫力で凄まれ、ろくに思考もできぬまま、冷静だったら絶対にいさかいになるような横暴な要求にも頷き、誓約書にサインまでしてしまった。
すると、奴は急に優しくなり、くちづけも囁きも、ようやく与えた熱く猛ったモノを突き入れる動きも至極いたわりに満ちていて、自分の甘い啼き声とベッド軋みと接合部からの卑猥な水音を意識の外で聞きながら相手の首にしがみつき、その夜初めてになる熱いほとばしりが奥に…。

ハッとして、スタースクリームはかぶりを振った。なぜ屈辱の晩の事を思い出しているのか。
ブルリと悪寒とは違う震えが身の内に走ったが無視を決め込み、傍らを見下ろせば、バイザーにもマスクにも覆われていない男の顔がある。
不健康そうな紙のように白い額には、いつもはきっちりと撫であげられている髪がかかり、その寝顔はいっそ幼いほどで、結構年上なのを忘れてしまう。
あまりに平和な様子で寝ている男の頬をつついても目覚めることはなく、ナイトスタンドのせいで長く落ちた睫毛の影がわずかに揺れただけだった。付き合いはじめの頃、ベッドを共にした時に、こちらが身動きする度に目覚めてしまったのが嘘のような無防備な顔だ。昼間の冷たく恐ろしげな情報参謀はどこに行ったのだ?
「安心しすぎだぞ、情報参謀閣下。私が寝首をかいたらどうする?」
返答は勿論穏やかな寝息のみで、妙に満たされた気分の中でさっきつついた場所にくちづけすると、スタースクリームはナイトスタンドの明かりを頼りに書類に向かった。
最中、寝惚けているのか、触手が一本二本と腰や背中を撫でてきたが、放っておく。こんなのはいつものことなのだ。
手にしたペンで、重要箇所にチェックを入れる。時計の針と後ろの男の寝息しか聞こえないなかで、仕事はスムーズだった。
最後の一枚にチェックを入れ終えたスタースクリームは、時計を見上げる。予想以上に早く終わったようだ。徹夜も覚悟していたが、まだ充分に眠れそうだ。
流石、優秀な私だ……そう自画自賛しながら書類の束を書斎に置いてこようと立ち上がった、その時、ナイトスタンドの明かりが大きな影に遮られた。
ギョッとして振り向こうとした体は後ろから羽交い締めにされ、悲鳴を上げる暇もなくベッドに引きずり戻された。
onpasuta5
書類が床にばらまかれ、ペンは何処かに跳ね飛ばされる。
仰向けにベッドに押し付けられ、驚きに動悸を激しく乱したスタースクリームは、金切り声で叫んだ。
「この、アホサウンド!急に何をするか?!」
薄闇の内で、白い顔が見下ろしている。ナイトスタンドの明かりのせいでいつもより彫りが深く見える男は、余裕の顔だった。いくら寝起きが異常にいい男とは言え、これは…。
「狸寝入りしてやがったな!」
「起きたばかりだ。誰かが俺の頬をつついてキスをしたくらいにちょうど目が覚めた」
「?!」
カァァ…と、スタースクリームの頬が夜目にも分かるほどに紅潮する。そこに、自分がされたのと同じ位置にサウンドウェーブはくちづけ、甘い声でささやいた。
「先程のキスはセックスの請求とみなす」
「くたばれ!!」
あまりにもムードの無い男に膝蹴りを食らわせようとしたが、あっさりと片手で膝を受け止められる。情報参謀のくせに、走る以外の身体能力が高いところが、なんとも可愛げがない。
未遂とはいえ、蹴りを放ったせいで、ガウンの裾がギリギリまでめくれ上がる。そこを凝視してにやりと笑い、サウンドウェーブは易々と足の間へ触手を忍び込ませた。
「興奮しているな」
「このっ、いいかげんに…アンッ!」
先程、かつての濃厚な情事を思い出していたせいですでに反応を見せているスタースクリームの前は、一撫でごとに敏感に震えてしまう。
「あ、やめっ、やめろ……アァッ、アアンッ!」
「その提案は却下だ。それよりも、今晩はどんな体位で犯されたい?」
耳朶に触れるサウンドウェーブの吐息は熱い。サウンドウェーブが発情している。
そう感じるとあっさり我慢できなくなって、スタースクリームはサウンドウェーブの首筋にすがりついた。そういえば、スタースクリームが新型のテスト機のパイロットとしてここ数日朝が早く、サウンドウェーブも情報部の決算を出すため週の半分をあちらに泊まり込んでいたため、お互いこの手のことは久し振りだった。サウンドウェーブの事は不明だか、少なくともスタースクリームは自慰すらしていない。
「あ、アァ…サウンドウェーブ……」
喘ぐ口をキスで塞がれ、前はサウンドウェーブの手で、後ろは触手の群れにいじられて、前からも後ろからも物欲しげな水音がひびく。スタースクリームは甘い啼き声をあげ、サウンドウェーブを呼んだ。呼び返してくれる男ではないが、替わりのように耳朶にくちづけられる。それで十分だった。それで満足できるようになってしまった我が身が情けないが、仕方がない。この男を選んだのは自分なのだから。
胸の尖りにサウンドウェーブの舌が触れ、手足の指の間にさえ細くなった触手が這いまわり、スタースクリームは腰を揺らし声をあげ続けた。それを見て、サウンドウェーブの笑みが深まる。新居を選ぶ時、やたらこの男が防音に拘った理由をスタースクリームは引っ越しの日の夜には身をもって知ることになったが、今では珍しく賢明な判断だったと思っている。この快感を声に出さずにやり過ごすのは至難であるし、かと言って壁が薄くても、こいつは抱きかたを変えるような気のきいた男ではない。むしろ、積極的に隣近所に房事の音を聞かせたがるだろう、サドだから。そういう事を考慮すれば、この男も少しはこちらの事を考えてくれているのか…大声で啼かされながら、まとまらぬ思考の内でスタースクリームはそんな事を思っていた。
「ヒ、アアンッ、もう、もう、サウ、アッ、ウェーブ…!」
「いい反応だ」
しかし、トロトロにとろかされているスタースクリームにも、相手の肌が熱く汗ばんでいるのくらいはわかる。滅多に汗をかかないサウンドウェーブの薔薇色に上気した肌に、スタースクリームは相手も今夜はずいぶんと余裕が無いのを知った。
普段は冷徹で無味乾燥な言葉しか吐かない薄い唇が、情熱的なキスを仕掛けてくる。互いの舌を絡ませ、互いの唾液の味に一層の興奮を味わいながら、スタースクリームは相手の固い胸板を撫で、腹の筋肉の盛り上がりを通り過ぎ、柔らかな茂みの中に目的のものを見つけた。トロリと濡れて、心音と同じリズムで脈打っている、大きな…。
「欲しいか?」
耳孔を舌でなぶりながら訊いてくる男に、スタースクリームは潤んだ目で流し目をくれて、珍しく言い返した。
「お前こそ、私が欲しいだろう?」
切れ長の双眸が驚いたように瞬き、次に嬉しげに細められた。
「ああ、欲しいな」
後ろから触手が引き抜かれ、サウンドウェーブが脚に触れてくる。
今晩も、これがスタートの合図だった。
「……アッ!!」

後ろからの体位をスタースクリームがあまり好まないのは知っている。口に出したわけではないが、その理由が、
──顔が見えない。
と言う可愛らしいものであることもサウンドウェーブは承知している。
しかし、今晩はあえて、身をよじるスタースクリームの尻を叩いてでもこの体位に拘りたい。
サウンドウェーブは目前で揺れる白い尻にキスマークをつけながら、みずからのモノを掴んだ。先走りで程よく濡れて、硬度も大きさも十分だ。久し振りの尻にコレを押し込むには、この体位が一番負担が少ないはずなのだ。
「サウンドウェーブ、や、やめろ…別のが……」
こちらのせっかくの気遣いを知らぬ風に、舌足らずに文句をつけるスタースクリームを黙らせる。これから後ろに突っ込まれる物と同じサイズの触手で口を犯す事によって。
最初嫌がっていたがすぐに大人しくしゃぶり始めたので、サウンドウェーブは再び尻に集中する。程よい弾力と吸い付くような手触りの尻の肉を掴み、これから侵入すべき部分をあらわにする。白い肌のなか、真っ赤に充血して濡れてひくついている様はひどく煽情的で、吸い寄せられるようにくちづける。
疑似口淫に気をとられていたスタースクリームが流石に恥ずかしがって身をよじるが、やめてやるわけにはいかない。初めて抱いた時に清楚なピンク色だったここを、こんな熟れた果実のようにしたのは自分だ……そう確認出来る楽しい時間を取り止めることなどできるはずがない。
ずっといじられ続け、内股に向かってトロリと粘液を伝わせる様はまさに食べ頃の果実で、もう一度音を立ててキスをしてやってから準備の整った部分をあてがう。
まだ始まってもいないのにすでに力が抜けているスタースクリームは、触手を口から引き抜かれた後はさらに脱力して、シーツに肘をつき、尻だけを高々と上げた格好だった。犯されたいと願う、欲情したメスの格好だ。
「いくぞ」
「あ、サウ…サ……──アアアッ!」
静かな物言いとうらはらに勢いよく突き入れると、スタースクリームは背を反らせて嬌声を上げた。
思ったよりもすんなりと受け入れたそこは熱く、せわしなく収縮を繰り返し、足はガクガクと震え、半開きの口からは唾液が一筋シーツへと滴ったが、射精はまだだった。後ろだけで軽く達してしまったようだ。
「今からそれではもたないぞ」
「だって、だって…──ヒャ、アッ、アッ、アアッ!」
動き出すと、達したばかりでより敏感になっているスタースクリームは髪を振り乱し、感極まった声を上げ続けた。ローションも使っていないのにすでにグジュグジュに濡れているそこを一切の容赦なくかき回し突き上げると、白い手がシーツを掻きむしる。さらに触手で乳首をこねくり回し、前を愛撫する。乳首は吸い付く相手を欲してプックリと立ち上がり、腹に届くほど反り返った性器は後ろを突き上げられる度に揺れて、シーツに先走りを撒き散らした。そして後ろは、きつい締め付けなのに吸い付くようにまとわりついて、オスの性を一滴残さず絞りとろうとしているようだった。
最高だ。
「アッ、ナカ熱いッ、アア、アアッ、ヤンッ、そこダメ!アアンッ!」
もはやいつもの羞恥の欠片も無く、スタースクリームは喘ぎ、快感の深さを喚き、サウンドウェーブはその度にほくそ笑む。
「ここか」
「ダメッ、そこイイからダメェ…!ンアッ、イイ、イイッ、も、もうイクッ、イクッ!」
禁欲のせいか、あっという間に内部が絶頂への痙攣を始めたのを繋がっている部分で敏感に感じとり、サウンドウェーブは一気に中から引き抜いた。そして突然の、しかも絶頂間近の中断に硬直する体を乱暴に引っくり返し、脚を大きく開かせる。
その時、スタースクリームと目が合った。
涙腺が決壊したように涙で頬を濡らし、そこに髪の毛を貼り付かせて涎まで垂らした情けない顔の中で、赤い瞳が頼りなげに潤んで揺れている。サウンドウェーブの趣味としては、この状態で散々焦らし、思い出す度に死にたくなるような淫らな言葉をもっと引き出したい所だが、彼も変態である前に一人の男だった。喧嘩しつつもどこか親子のような近さを感じさせるメガトロンにも、何くれと若い同僚の世話を焼くレーザーウェーブにも見せることのない表情で、しかも震える声で、
「サウンドウェーブ…!」と名を呼ばれて忍耐していられるほど、彼にも余裕は無かった。
噛みつくように激しいくちづけを交わしながら、物欲しげにひくつくソコに再び突き入れる。スタースクリームの背は弓なりにのけぞり、脚がもがくようにシーツを蹴った。
「──アアッ、アアンッ、熱、熱い、アアーッ!」
最早、何を口走っているかも分からず喘ぎ続けるスタースクリームの脚を抱え上げ、額に汗を伝わせながら一心不乱に腰を打ち付ける。その動きに合わせ、スタースクリームの性器に群がった触手が、先走りにぬれながらさらに快感を引き出すべくうごめく。
「スター、スクリーム」
呼び掛けに応えるどころか最早声も出ず、スタースクリームはサウンドウェーブの腹の下でヒイヒイと泣き声めいた荒い息をするばかりだ。快感が強すぎて背中にすがることも出来なくなり、シーツに上に落ちた手にサウンドウェーブは手を重ねた。絡み合った指に、サウンドウェーブは射精とはまた違った、あるいはそれ以上の満足を得た。

この男は俺のものだ。

「ヒッ、イクッ、イ、アッ、アアアアーーッ!!」
サウンドウェーブのえぐるような一突きに、スタースクリームは性器から勢いよく精液を撒き散らした。サウンドウェーブも、自分の腹めがけて熱い物を感じた瞬間、中に放っていた。禁欲のせいで濃く大量に溜まっていた精液は何度かに分けて長く吐き出され、その度にスタースクリームの内部は痙攣しきつく締まった。夢にみそうな素晴らしい締め付けだった。
二人のあいだに飛び散った精液を、サウンドウェーブは汗を拭うより先に指ですくって口に運び、目を細めて味わう。濃い味だった。浮気は勿論、自慰すらしていない味だった。まだ若い彼なのに。
「ば、馬鹿、何してる?!」
荒い息をついて脱力していたスタースクリームだが、さらに味わおうとするサウンドウェーブに流石に咎める声を上げると、彼はごく生真面目な顔で言った。
「お前の精液を舐めている」
「やめろ、変態!!」
「残念ながらその変態はお前の恋人だ。ーーひとつ質問がある、スタースクリーム」
あまりにも堂々とした言い様に言葉を失っている恋人の耳朶に唇を寄せ、低い声でサウンドウェーブは囁いた。
「お前が自慰をしてないのは、もう俺以外では満足出来ない体になったからか?」
「?!」
真っ赤になって音速で顔を背けたスタースクリームだが、まだ繋がっている部分が甘えるように絡み付いてきたので、サウンドウェーブは彼らしからぬ柔らかい微笑を唇に浮かべると、目の前の顔以上に真っ赤になっている耳朶に囁いた。
「続きをするぞ…──俺もお前以外では満足出来ない」

返答はおずおずと首筋に回された白い腕だった。

報部の奥にあるのは、ここの主の個室。
主こと情報参謀閣下に許可を得なければ始祖評議会の議員でも指一本入れられないこの部屋に、書類を抱えたレーザーウェーブが足を踏み入れる(勿論、アポ済み)と、見る度に頭がごちゃごちゃしそうになる端末に囲まれて、情報参謀であり友人でもある男は端然と座っていた。
大画面のモニターで白い液まみれのスタースクリームが尻を振って喘いでいる様を眺めながら。
「おい、サウンドウェーブ」
高性能のヘッドフォンを装着しているサウンドウェーブは振り向かず、レーザーウェーブはちらりとドアが施錠されているのを確認してからツカツカと近付き、ヘッドフォンの接続端子を引き抜いた。
途端、
『──サウ、サウンドウェーブッ、アンッ、中に、中に熱いのいっぱい欲しい!中に出してぇっ!!』
onpasuta7
部屋に響きわたったあられもない嬌声にレーザーウェーブは男らしい眉をひそめはしたものの、慌てることはなかった。この部屋は完全防音で音漏れの心配は無いし、彼もこんなものは慣れているのだ。
「サウンドウェーブ、来たぞ!」
「分かっている」
平然と応じたサウンドウェーブは、イスを回して足を組んだ格好のままこちらを向いた。手元で操作したのか感極まった喘ぎ声は止み画面も静止状態になったが、モニターに男(サウンドウェーブだろう)の腰の上に跨がったスタースクリームの真っ赤に勃起した性器から白濁した液体が噴出した瞬間を映しっぱなしにしているのは、作業途中で邪魔をしたこちらへの嫌がらせだろうか。
レーザーウェーブは別に、これしきで固まるほど初心ではないが、どうせ操作するならモニターを落としてもらいたかった。なにが悲しくて同性の同僚たちの濃厚な濡れ場を眺めなければならないのか。
「ほら、経理部からの書類だ」
「スタースクリームは終わったのか?」
「終わった。声が掠れて目の下に真っ黒なくまを作って真っ直ぐ歩くのさえ辛そうだったが、根性で終わらせた」
休み明けで出てきたサンダークラッカーが、上司がとんだ悪質の風邪にでもかかったかと驚き、いつも以上にかいがいしく世話を焼いていたことは伏せておくべきか。この男は異様に嫉妬深いから。
手渡された書類をパラパラと眺めている(やる気が無いわけではない。速読できるこいつにとっては普通の読み方だ)サウンドウェーブの顔半分を覆う赤いバイザー越しに、レーザーウェーブは睫毛の長い切れ長の双眸を眺めて言った。
「お前まで目の下にくまを作るとは、昨夜はそんなに盛り上がったのか?」
「一睡もせずに、朝までだ」
恥ずかしげも無く言って、サウンドウェーブは書類を捲る。
「よく眠くならないな。今朝は早朝会議だったのだろう?」
「始祖評議会とのくだらん会議だからな。この映像を遠隔で編集してテンションを保っていた」
モニターを顎でしゃくると、パッと画面が切り替わる。今度は尻を何本もの触手に犯されいるスタースクリームが、恍惚とした表情で血管が浮き上がるくらいに勃起した男(サウンドウェーブのはずだ)の性器をアイスキャンディーのように舐めてるアップ画像だった。
今度は流石のレーザーウェーブも嫌そうに視線を逸らした。何が悲しくて、友人の勃起した男性器を大画面で拝見しなければならないのか。
「同棲している二人にあれこれ言うのは野暮だが、あまり無理をさせるなよ」
「分かっている。いつもはもう少し控えている。ただ…」
サウンドウェーブは読み終わりサインも済ませた書類を差し出しながら、平然と言った。
「新しい薬を試してみたのだが、遅効性の上、生姜と共に摂取すると効果が倍増することが判明した。二回目くらいまではいい塩梅だったのだが、その後スタースクリームがおかしくなった」
「…何に入れたんだ?」
「お前に教えてもらった、鶏肉と生姜のスープだ」
レーザーウェーブは、この男が恋人のために料理を始めた事に感激し、簡単で栄養たっぷりのメニューのレシピを色々と教えてやった過去の自分を情けなく思った。
この男が邪な思惑を1ミリも持たず、料理などするはずが無いではないか。
「少し卑猥な言葉でおねだりするくらいでよかったのだがな」
これだとまるでポルノだな、いやこれはこれで最高だが……などと呟きながら再びモニターに向かったサウンドウェーブの前で、映像が動き始める。カメラのある方に向けて触手を使って脚を大きく開かせているから、顔を真っ赤に染めて泣きながら喘いでいるスタースクリームの全てがあらわだった。触手に絡みつかれ立ち上がった性器も、後ろから恋人にいじられてチェリーのように熟れた乳首も、長い指に犯されて中に放たれた精液を溢す尻の穴も。
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『やんッ、や…指でイキたくないから、そこダメッ!アン、アアンッ、ダメだっ…て、ダメェ、またイッちゃうからぁ!サウンドウェーブの入れてよぉ、大きいのここに入れて…』
明らかに三台以上のカメラと盗聴機を使って撮影されている臨場感たっぷりのクリアな画面からは、手段はともかく、撮影者の愛情は嫌なくらいに感じられた。いずれはこれも、サウンドウェーブのコレクションとして、〔□□□年△月○日 媚薬編 体位多数〕とかタイトルをつけられ、国家機密レベルのセキュリティを誇る秘密の倉庫に納められるのだろう。これまでの〔シャワールーム編 立ちバック〕とか〔青姦 騎乗位 着衣〕とか〔会議室 強制自慰〕とかの、スタースクリームが知ったら光速で銃をつきつけられるだろう恥ずかしい記録映像と共に。
サウンドウェーブが手を動かすと、二人が激しくくちづけを交わす映像に変わる。画面外でどこかをいじられているのか、スタースクリームは薔薇色に染まった体を震わせている。
「…なあサウンドウェーブ、わたしがこんなことを言うのもなんだが……」
人の色恋に口出ししない主義のレーザーウェーブだが、これまで何度もスタースクリームに、
──サウンドウェーブってちょっとマニアックなところがあるけど、実はかなりの変態なんだろうか…?
と弱々しい声で相談される度に、
──奴の個性だ、気にするな!少なくとも奴はお前にベタ惚れだ。
と思いっきり話を逸らし、奇妙な励まし方をして、二人の仲を取り持ってきただけに罪悪感は無視できず、つい咎める口調で言ってしまった。
「生身の恋人が傍に居るのに、必要なのか、これは?」
友人は手を止めてこちらを振り向いた。
「スタースクリームは航空参謀になった今も現役のパイロットだな」
「ああ」
メガトロンが航空参謀だった昔、彼がずっと第一線の現役にして最強の戦闘機乗りだったこともあり、現航空参謀のスタースクリームもいまだに現役を退いていない。
「そうだな、それがどうした?」
「軍務に就いている以上、我々は常に危険と隣り合わせの身だが、情報部の部屋に籠っている事の多い俺よりもあいつのほうがリスクは格段に大きい。奴のパイロットの腕は俺も認めているが、それでも時々考える、あいつが先に死んだら俺はどうしたらいいのか…と」
『サウ、サウンドウェーブ、好き…だ……』
モニターの中で自分の腕に抱かれて愛の言葉を囁くスタースクリームを見詰めるサウンドウェーブの手は止まっている。深い想いの向こうを見詰めているように。
『──好き…』
『ああ、俺もだ』
画面の向こうでサウンドウェーブが囁く。
そして、こちらにいる彼も。
「……別にこんな物があいつの代わりになるわけもないが、その時がもし来たなら、あいつを偲ぶよすがくらいにはなるだろう。それにこんな物でも無いと、俺は正気を保てないような気がする。──それが理由だが、他に何か質問はあるか?」
「いや、ないな」
「俺のような男がどういう心境の変化だ?とは訊かないんだな」
「そんなの…」
レーザーウェーブは肩を竦めた。
「お前が自分の寝顔をスタースクリームに見せても平気になったと言ってきた時点で、お前が彼に対処不可能なくらいに骨抜きにされていることは分かったからな、これ以上独身男に当て付けてくれるな」
「…そうか」
応じる声は常と同じく淡々としていたが、そこに隠しきれない幸福の充足を見た気がして、レーザーウェーブは満足げに笑うと、
「今晩は寒い。季節柄、牡蠣のシチューなんかオススメだな!」
と言って、書類を抱えて出ていった。
サウンドウェーブは手元の時計に視線を落とす。そして、少し思案した後に内線を入れた。
「スタースクリーム、ああ俺だ。今日はもう上がれるだろう、二人で買い物をして帰るぞ。ああ、分かった…──ところで、今夜は牡蠣のシチューなんてどうだ?」

~終わり~

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最初の部分が届いた時点でニヤニヤし始めておりましたが、毎回続きが届くたびにニヤニヤどころの騒ぎでなく、にやけながらそこら中を転げまわり世界の中心で萌えを叫びたい気分だったのは言うまでもありませんド━(゚Д゚)━ ン !!!
どこから萌えて良いのか分からないほど萌えが詰まっているのが本当にたまらないんです・・・!
続きを頂くたびにくだらない上にアホな妄想を垂れ流し、しかしその妄想をお話の中に登場させてくださったり、そうしてエロエロすぎるスタちゃんに毎度鼻血噴きそうになったりしました。すいません、でもありがとう・・・!!
ああもう、いいなぁ、ラブラブ・・・!交換日記とか、内臓云々とか、序盤からぶっ飛ばし気味に変態っぷりを披露する音波さんに惚れ惚れします。
もちろん夜の方もド変態であるわけですけど、それもすべて愛のなせる業かと思うと音波さんが可愛く思えてきます。
まぁその趣味嗜好に付き合わされるスタは大変でしょうけど、幸せそうなので問題ないと思う!
そしてその二人を生温かく見守っている光波さんの漢ぶりに惚れ惚れしますよ!!
た、たまらん・・・!!何度も読み返してモニタの前でニヤニヤしっぱなしです・・・!!!
菊地さん、ありがとうございました!ごちそうさまでしたーーー!(´~`)モグモグ

 

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